2013/02/03

外国人100人以上を面接した女子大生が見た「フィリピン共和国の英語教育ビジネスを支える講師たちの素顔」と「オンライン英会話サービスの未来」



序章
 「外国人を100人面接しました。」 “面接官”の私は22歳の大学4年生です。

場所はフィリピン共和国のセブ島。オンライン英会話学校を運営する「ラングリッチ」という日本企業で5カ月間インターンシップをしてきました。
普段はパソコンの画面の向こう側にいる100人のフィリピン人講師を面接すること。オンライン英会話サービスの最前線の現場で見た「フィリピン共和国の英語教育ビジネスを支える講師たちの素顔」と、私が考えた「オンライン英会話サービスの未来」を書きました。


<目次>
序章
1章・基本情報の確認:「オンライン英会話講師」とは何者なのか。
2章・現状報告:オンライン英会話講師たちの素顔。フィリピンの雇用環境
3章・未来予測:日本人英語学習者の英語力が伸びれば、フィリピン人講師の質も自ずと向上していくだろう。
4章・オンライン英会話学習者のための「講師の選び方のヒント」
5章・コラム「年齢の若い講師を「先生」ではなく「学習パートナー」と考える“発想の転換”のススメ」
終章


1章・「オンライン英会話講師」とは何者なのか。基本情報の確認。
 
 「フィリピン共和国でオンライン英会話講師の職に就いている人たち」彼らはどういう人たちなのか。メイン層は「学部卒の20代」次いで「現役の大学生」「学部卒の30代」の人々です。英会話講師を務めるには、学部レベルの教養と英語力が必須です。※フィリピンの大学進学率は「約30%」、同じASEAN諸国のマレーシア、インドネシアよりも高い。男性よりも女性の進学率が高いのが特徴。

 ラングリッチあるセブ島は、「フィリピンの地方都市」「人気のリゾート地」そして国内有数の「外国人向け英会話学校の激戦区」です。外国人を受け入れる滞在型の語学学校も多い中、オンライン校舎で働く彼らの一部は「早朝・深夜のみ勤務する現役大学生」「仕事を掛け持ちする者」「平日は他の語学学校で勤務し、週末のみオンライン校舎で働く者」など、事情は様々です。
一方で、複数の学校で英会話講師をしてきた、ある講師は「実際に生徒と向き合って指導できる留学校舎の方が良い。オンラインでは授業時間も短いし、制限が多い。」と話します。労働者の立場で見ればオンライン英会話学校は「勤務時間の融通が利く(パート/アルバイトで続けられる)」という利点が、滞在型の留学校舎では「生身の生徒と向き合えるので、指導がしやすい。(より強いやりがいを感じられる)」という利点があるようです。 

以上、フィリピンのオンライン英会話学校の講師たちの超基本情報でした。彼らの素顔が、面接によって見えてきます。


2章・現状報告:オンライン英会話講師たちの素顔。フィリピンの雇用環境

私が出会った「オンライン英会話講師」がどういう人たちだったのか、具体的に紹介していきます。
 A. 中心は20代の若者たち。なかでも目立つのは「看護学部」「教育学部」出身者。
 B. 盛んな英語教育ビジネスを背景に、学校を転々とするフィリピン人講師。
 C. 「オンライン英会話」か「コールセンター」という選択肢
 D. 30代の講師には、多様な職歴を持つ人たちが揃う。
 E. 「いつかは海外就職」を目標に、現在も英語学習を怠らない講師たち。

A.    中心は20代の若者たち。なかでも目立つのは「看護学部」「教育学部」出身者。
  前述したように、講師の過半数は20代です。出身学部別に見ると、看護学部と教育学部の出身者が多いです。私がインターンをしたラングリッチの近くには、教育学部で有名なセブ・ノーマル大学(日本の“東京学芸大学”をイメージしてください)があったので、環境的要因も考えられます。
 看護学部は、数年前フィリピン人に最も人気のある学部でした。理由の1つが、海外就職を目指す若者にとって、看護師資格は非常に有効な資格だからです。しかし、諸外国の政策変更で海外の雇用機会は減少。国内の雇用も限られ、資格を持ちながら看護師の夢を諦めた者、無給のボランティア看護師として雇用のチャンスを待つ者、選ぶ道は人それぞれです。「看護師資格はあるし、海外勤務を目指せる英語力はある。でも働ける医療現場が無い」そんな若者たちが、英会話講師の職に就くことが多いのです。
更に、看護学を学んだ者は“教育者”としての素地もあるのではないか、という意見もあります。複数の看護学部出身の講師が、以下のように話していました。「看護の仕事と教育の仕事は、似ているところがあります。看護師の仕事の1つが、患者さんに対して病気や治療方法について分かりやすく伝えること。真面目で熱心に学ぶ日本人の生徒さんに英語を教えるのは、看護と比べると楽です。私たちは患者さんのお世話をして助けて差し上げることに喜びを感じるので、生徒さんの成長を助けて差し上げることもまた非常にやりがいのあることなのです。」

【参考記事】
Nursing dream turns sour in thePhilippines(看護師の夢、苦い現実)
これまで長い間、看護師として海外就職することは、貧困から抜け出すパスポートのように考えられてきました。(中略)しかし近年、各国で自国民の雇用を重視し、特に欧米ではフィリピン人の労働機会を厳しく制限するようになりました。”
 

B.    盛んな英語教育ビジネスを背景に、学校を転々とするフィリピン人講師。
  フィリピン・セブ島には留学校、オンライン学校を合わせて多数の英会話学校があります。日本に比べて人材の流動性が激しく、1年未満で他の英会話学校に転職を繰り返す人が多いのが実態です。
私が講師たちから聞いて驚いた、いくつかの「ラングリッチ以外の英会話学校」のお話をします。フィリピン国内での英語学習ビジネスの先駆者、韓国人が経営する、韓国国内在住者向けのオンライン英会話サービスです。

◆韓国系オンライン英会話A社:ビジネス英語専門。顧客(生徒)は、会社員。
 【指導内容】英文ビジネスメールの添削。15分間の電話での英会話レッスン。
 
 ◆韓国系オンライン英会話B社:児童教育専門。生徒は小学生・中学生。
  【指導内容】オンライン英会話が学校のカリキュラムに組み込まれているため、生徒たちは学校のパソコン室よりビデオ電話をかけてくる。マンツーマン授業で、学校が用意したオリジナル教材を使用する。

 ◆韓国系留学学校C社:TOEIC,TOEFL,IELTS等の試験対策に力を入れる学校。そこで働く講師は、頻繁に指導方法の講習会を受けさせられる。
 
 以上のA,B,C社のような「専門性の高い学校」でキャリアを積んだ講師は、ラングリッチの様な大衆向け英会話学校では貴重な存在です。


C.    「オンライン英会話」か「コールセンター」という選択肢
英会話講師たちの職歴の1つに「コールセンター」がよく見られます。高度な英語力が求められるため、どちらも大学卒の高学歴なフィリピン人が多い職業です。
フィリピン人の英語力は世界的にも有名です。英語能力試験「TOEFL」ではアジア5位の実力。ネイティブスピーカーにも通用する高度な英語力と安価な労働力のため、英米企業の業務アウトソーシング先として確固たる地位を築いてきました。2011年、コールセンターに勤務するフィリピン人は約60万人。コールセンター産業の規模はインドを超え、世界1の大きさになりました。
時差の関係で、勤務時間は深夜。業務内容によっては、顧客からのクレームを延々と聞き続けることになるストレスの多い仕事だと聞きます。給料は英会話講師より高額ですが、労働環境の厳しさからオンライン英会話に転職してくる人が多いです。

コールセンターでは、ネイティブスピーカーの顧客からの苦情を避けるために、フィリピン人たちに徹底した研修を行います。研修内容には、英語の発音・イントネーション、文法も含まれています。会社によっては、研修に2週間を費やす徹底ぶりです。
そのため、コールセンターでの勤務経験のある英語講師は「特に発音が洗練されている」ことが最大の特徴です。

【参考記事】
A New Capital of Call Centers(コールセンター 新たな中心地)
“フィリピン人は、小学1年生からアメリカ英語の教育を受け、ハンバーガーを食べ、バスケットボールNBAを応援し、生活全体が「アメリカナイズ」されています。そこに、東洋の「おもてなしの心」が合わさり、独特のコンビネーションが生まれたのです。”


D.   30代の講師には、多様な職歴を持つ人たちが揃う。
上述の「講師の大半は20代」「英会話学校を転々とする」「コールセンターという選択肢」から推測できることでもありますが、30代以上のオンライン英会話講師の人材の多様性は20代の比ではありません。
「公立高校の教諭」「日系メーカー企業の営業マン」「建設現場監督」「起業家」「中東(ドバイ)で販売員」「中東(カタール)で英語教師」「アメリカで塾講師」…以上すべてが、私が話しをした講師の過去の職業です。


E.    「いつかは海外就職」を目標に、現在も英語学習を怠らない講師たち。
A.看護学部出身の講師」で「看護師資格は海外就職を目指すには有利な資格」と書きましたが、事実、フィリピン共和国は海外就労者数(OFW)950人~1000万人(全人口9485万人の11%以上|10人に1人が海外就労)。海外就労者からの本国送金がGDP10%強を占めています。
看護師、英語教師として海外就職を目指している講師も一定数存在しています。彼らに共通するのは「英語運用能力試験IELTSの勉強をしている/高得点を持っている」こと。IELTSはフィリピン人が英語圏の国で就職する際に、最も参考とされる英語運用能力試験。スピーキング・ライティング・リーディング・リスニングの4技能を問う試験です。


3章・未来予測:日本人英語学習者の英語力が伸びれば、フィリピン人講師の質も自ずと向上していくだろう。

 「外国人向け英語指導講師(留学・オンライン)」という“職業”には、「大学教育を受けた知識層の若者」が多く従事しています。アメリカ文化の影響を色濃く受けているフィリピン人の英語運用能力の高さは疑いなく、彼らはまさしく「同じ英語非ネイティブ話者の日本人が目指すべき姿」を体現しており、それゆえに、日本人(+韓国人、中国人、その他・東南アジア諸国民)がフィリピン人講師から英語を学ぶという関係が成立しているのです。
<フィリピン共和国が、東アジア諸国民の英語力、すなわち「個人の国際競争力」を引き上げている> 私は、このことがより大規模に実現していくことを願う1人です。

しかしながら、採用条件や雇用形態を見る限り、すべての講師が「(特別な資格を持つ)教育のプロ」というわけではありません。今後、講師の採用条件の基準を上げ、講師に定期的に指導方法の研修を与え、教材など教育環境を洗練させれば「フィリピン国内で提供される外国人向け英語教育サービス」のレベルは、まだまだ飛躍的に向上していくことでしょう。その潜在能力はあるのです。
ただ、今はまだ、それを求める「需要=サービス享受者=(日本人の)英語学習者」が追いついていません。学習者の大半が高校英語の復習をしているのであれば、学習者の大半がTOEIC730点突破を目標にしているのであれば、現在の講師のレベルでも一定の教育成果を収められ、学習者の満足度も高いのです。言い換えれば、学習者の要求レベルが上がるにつれて(例:学術論文の添削,英語で商談を行う練習)、サービス提供者=英会話学校も進化していかなければ淘汰されていくでしょう。

フィリピンの外国人向け英語教育業界がその段階に到達した時、優秀な講師が適切に評価され、業界全体に専門性の高い講師が増えていくと考えられます。 ()専門性の高い講師:教員免許(英語)を取得している講師。上述AC社のような専門性の高い分野の指導研修を受けた講師。

私はその未来を見ることが楽しみです。


4章・オンライン英会話学習者のための「講師の選び方のヒント」
 
 目的別に、3タイプの講師の選び方です。
【英文法から正確に英語を学んでいきたい】
 ☆英語教諭の教員免許を取得している講師
  最も間違いのない選択です。ラングリッチにも複数名在籍していましたが、知識と指導能力の高さが抜群なので、皆が予約の取りづらい人気講師でした。

【発音・イントネーションを矯正したい】
 ☆コールセンター勤務経験のある講師
  前述のとおりです。コールセンターの対象顧客は本国在住のアメリカ人、イギリス人、オーストラリア人であるため、ネイティブ話者の顧客から信頼されるためにコールセンター勤務者は特別な「発音矯正トレーニング」を受けています。

【ビジネスの現場で使える英語表現を身に着けたい】
 ☆英語教育の職場以外での勤務経験がある講師
  ビジネスパーソンは「中身を伴う英語」を学ぶ必要があります。ビジネスメール、ビジネスレター、プレゼンテーション資料、面接対策…これらに対し「スペル・英文法の指導以上の指摘」ができる講師は、“経験がある者”です。前述のとおり、30代以上の講師には多様な職務経験のある者が集まりやすいので、彼らの中から探してみることをオススメします。講師の年齢が高いと、本当のビジネスの現場の様で良い緊張感が生まれる、という利点もあります。

 ◆以前に制作したまとめ「格安オンライン英会話~初心者のための先生の選び方~」もご参考ください。 http://matome.naver.jp/odai/2134994015654359401

 繰り返しになりますが、英語講師として雇用されているフィリピン人講師たちの英語力は十分に「同じ英語非ネイティブ話者の日本人が目指すべきレベル」です。上記の条件(肩書き)に当てはまらない講師の中からでも、教え方が好みの講師、性格の合う講師、趣味の合う講師は見つかります。たくさんの講師の中から、信頼できる「学習パートナー」が見つかることを祈っています。


5章・コラム「年齢の若い講師を「先生」ではなく「学習パートナー」と考える“発想の転換”のススメ」

「オンライン英会話サービスを初めて利用する人が知っておくべき8つのこと~格安英会話サービスを十二分に活用する方法~」 http://togetter.com/li/433759

 こちらの記事を書いた@Hal_Jさんは、次のように薦めています。

  フィリピン人講師は「学習パートナー」⇒ フィリピン人講師は「先生」というよりは「学習パートナー」と考える方が良いです。フィリピン系オンライン英会話の1対1授業を行う講師は通常20代前半~中盤です。講師は生徒であるあなたよりずっと若い事が有ります。日本人にとっては何かを教わるということは、「先生」から学ぶことを意味しています。「先生」とは「先に生まれた人」のことです。けれどオンライン英会話で教師となるのは自分よりも若いフィリピン人達です。彼らは「先生」ではありません。
 例えば、ニュース記事を使って特定の専門分野についての英語を学ぶ際に、その専門分野について生徒であるあなたの方がフィリピン人講師よりもずっと詳しいということはよく有ります。この場合、「知識」ではあなたが、「英語」という能力ではフィリピン人講師の方が優れています。このような関係が成り立つ1対1授業において教師は時に生徒になり、生徒は時に教師になります。教師と生徒という関係は時に逆転するのです。オンライン英会話の1対1授業の場は「教師」と「生徒」の関係が固定している場ではありません。フィリピン人講師に任せきりにするのは止めましょう。ここではあなたが主体的であればあるほど、得るものが多くなります。彼らはあなたの「学習パートナー」です。一方的に導く「先生」ではありません。(引用終わり)


講師の年齢の若さを、逆転の発想で自分にプラスにする方法ですね。「主体的な授業づくり」で、自分本位の効率的な授業を楽しんでみてください。


終章
 以上が、5カ月間の面接と、実際に授業を受けた体験から出した「オンライン英会話サービスに従事するフィリピン人講師たちに関する考察」と、それに基づいた「オンライン英会話講師の選び方のヒント」です。
 

 >オンライン英会話サービスを利用する“学習者”の皆さま

 この記事からパソコンの画面の向こうのフィリピン人講師たちの“素顔”を垣間見て、彼らに親近感を持ってくださったら嬉しいです。英語の学習方法の1つとして、“Skypeを使ったオンライン英会話サービス”を引き続きお楽しみください。


>オンライン英会話サービスを展開する“事業者”の皆さま

 まだ少し先のことになると思いますが、日本人の英語力が底上げされていくにつれて“専門性の高い講師”が重宝される時代が来ると思います。勤務しているフィリピン人講師達にとっても“オンライン英会話講師”という仕事が、より「やりがいのある、誇れるもの」であってほしいと願います。応援しています。


 >フィリピンで英語教育ビジネスを運営する全ての“日本人”の皆さま

  私の目から見た、今の状況は、
フィリピン共和国が、東アジア諸国民の英語力、
すなわち「個人の国際競争力」を引き上げている
  ということです。使命感と誇りを持って事業を頑張ってください。
  日本人を、日本を変えられる力を持っていると確信しています。





@tomo627 こと Tomo

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『オンライン英会話の本当の話』オフ会+@Hal_Jさん










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